事件番号:JP2013-0004

                  裁 定

  申立人:
  (名称)有限会社ハッピープライス
  (住所)東京都中央区日本橋蛎殻町一丁目38番12号 油商会館ビル1F

  登録者:
  (名称)tokyo love soap
  (住所)Nagoyashi Nakaku Sakae 5 Chome 11-
      4 Dai 3 Tagikk Biru 403

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針(以下、「方
針」という。)、JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以下、「規則」という。)
及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並び
に条理に則り、申立書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定
する。

1 裁定主文
  ドメイン名「TOKYOLOVESOAP.JP」の登録を申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「TOKYOLOVESOAP.JP」である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
 申立人は、商標登録第5224291号の商標権者であるところ、登録者が申立人商品
の正規メーカーを装い、紛争に係るドメイン名「TOKYOLOVESOAP.JP」(以
下「本件ドメイン名」という。)を登録し、使用していることを主張する。本件ドメイン名
は、申立人の商標と混同を引き起こすほどに類似し、登録者は本件ドメイン名について正
当な利益を有していないし、本件ドメイン名は不正の目的で登録され、使用されている。
 したがって、申立人は、本件ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。
 b 登録者
 登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点とそれに対する判断
(1)方針及び規則の適用について
 方針第4条aは、適用対象となる紛争の要件として、申立人が次の事項の各々を証明し
なければならないことを規定している。

 ①登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と同一
  又は混同を引き起こすほど類似していること。
 ②登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと。
 ③登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること。

 上記①から③の要件を判断するにあたり、規則第15条(a)は、「パネルは、提出され
た陳述・文書および審問の結果に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規
の規定・原則、ならびに条理に従って、裁定を下さなければならない」と規定する。他方
で、本件において登録者は答弁書を提出していないところ、規則第5条(f)は、「もし登
録者が答弁書を提出しないときには、例外的な事情がない限り、パネルは申立書に基づい
て裁定を下すものとする。」と規定する。
 したがって上記①から③の要件に関する申立書における主張について、各要件に関する
申立人の主張が不十分である又は各要件該当事実の存在を否定する事実が認められるとい
った例外的な事情がない限り、申立人の主張に従い、本件ドメイン名登録移転の裁定を下
すことが妥当と考える。

(2)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
 申立人は、申立人が平成21年8月26日に、商標登録第5224291号(指定商品:
第3類「せっけん類、化粧品」、以下「申立人登録商標」という。)を譲り受けた商標権者
であり(甲1)、他方で登録者が平成24年10月18日に本件ドメイン名を登録したとこ
ろ、本件ドメイン名は申立人と登録者の間に緊密な関係があるとの誤認を生じさせるおそ
れが極めて高く、取引先などへの誤認混同を招くおそれもあるとして、類似性を主張する。
 当該主張に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また一件記録を検討しても、類
似性を否定する例外的な事情は認められず、かえって、本件ドメイン名中の識別力のある
「TOKYOLOVESOAP」の部分は、申立人登録商標と称呼及び観念において類似
するものと認められる。
 したがって、ドメイン名は、申立人登録商標と混同を引き起こすほど類似していると認
められる。

(3)権利又は正当な利益の不存在
 申立人は、本件ドメイン名から外部リンクされているhttp://tokyolov
eshop.comにて、申立人登録商標に係る商標権を侵害する商品である東京ラブソ
ープアルティメット(甲2)が販売されているところ、ドメイン名がコピー品を正規品の
ように装って購入を促すための入り口サイトに使用され、一般ユーザーに誤認混同を生じ
させていると主張する。
 当該主張に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また一件記録を検討しても、方
針第4条c(ⅰ)から(ⅲ)に該当するような登録者の本件ドメイン名に関係する権利又
は正当な利益の存在を裏付ける事実は認められない。むしろ、申立人の上記主張にかかる
事実は、「申立人の商標…を利用して消費者の誤認を惹き起こすことにより商業上の利得を
有する意図を有する」(方針第4条c(ⅲ)参照)ものといえる。
 したがって、登録者は本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないと
認められる。

(4)不正の目的での登録又は使用
 申立人は、登録者が申立人取引先に対して、本件ドメイン名に係るウェブサイトが正式
メーカーのウェブサイトであると警告し、商品販売の差止請求を行い、また東京ラブソー
プを扱いたいのであれば本件ドメイン名に係るウェブサイトから商品を購入するよう執拗
に迫り、申立人の事業を混乱させていると主張する。これは、「登録者が、競業者の事業を
混乱させることを主たる目的として、当該ドメイン名を登録しているとき」(方針第4条b
(ⅲ))に該当すると認められる。
 さらに、申立人は、新規に申立人商品の仕入れを検討している会社が本件ドメイン名に
係るウェブサイトを正規メーカーのウェブサイトと勘違いし、当該ウェブサイト記載のコ
ンタクト先(甲4)に連絡をしていると主張しているところ、これは「登録者が、商業上
の利益を得る目的で、そのウェブサイト…またはそれらに登場する商品…の出所について
誤認混同を生ぜしめることを意図して、インターネット上のユーザーを、そのウェブサイ
トに誘引するために、当該ドメイン名を使用しているとき」(方針第4条b(ⅳ))に該当
すると認められる。
 以上に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また一件記録を検討しても、不正の
目的での登録又は使用を否定する例外的な事情は認められない。
 したがって、登録者の本件ドメイン名は不正の目的で登録され、使用されていると認め
られる。

6 結論
 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名「TO
KYOLOVESOAP.JP」が、申立人が権利を有する商標と混同を引き起こすほど
類似し、登録者が本件ドメイン名について権利又は正当な利益を有しておらず、本件ドメ
イン名が不正の目的で登録され、使用されているものと判断する。
 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「TOKYOLOVESOAP.JP」の
登録を申立人に移転するものとし、主文のとおり裁定する。

   2013年5月31日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
              牧 野 利 秋
              単独パネリスト


別記 手続の経緯
(1)申立書受領日
   2013年4月12日(電子メール)及び4月15日(書面)
(2)手数料受領日
   2013年4月15日 申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
   2013年4月15日 JPRS へ照会
   2013年4月15日 JPRS から登録情報の回答
   回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRS
        に登録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等
(4)適式性
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2013年4月
  16日に、申立書の補正及び証拠一覧表・証拠説明書の提出が必要と判断してそ
  の旨を申立人に通知し、補正した申立書及び証拠一覧表・証拠説明書を4月24
  日に受領した。センターは,同日に,申立書が処理方針と規則に照らし申立書が
  適合していることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
   1) 申立書送付日(手続開始日)2013年4月24日(電子メール及び郵送)
   2) 申立書及び証拠等一式
   3) 答弁書提出期限 2013年5月27日
  但し登録者宛郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された。
(6)手続開始日 2013年4月24日
   センターは、2013年4月24日に申立人及び登録者には電子メール及び郵
  送で、JPRS 及びJPNIC には電子メールで、手続開始日を通知した。但し登録者宛
  郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
   センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2013年5月
  28日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不出通知書を、申
  立人には電子メールと郵送で、登録者には電子メールで通知した。
(8)パネリストの選任 2013年6月3日
   申立人は1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
   中立宣言書の受領日:2013年6月6日
   パネリスト:弁護士 牧野 利秋
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
   2013年6月3日 JPNIC 及びJPRS へ電子メールで通知
             申立人へ電子メール及び郵送で通知
             登録者へ電子メールで通知
             裁定予定日:2013年6月21日
   裁定予定日:2013年6月5日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
   2013年6月3日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
   2013年6月18日 審理終了、裁定。